ハイヤー・タクシー業界専門情報紙  株式会社 交通界
2011年9月12日

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「週刊交通界21」毎月4回情報発信

いま改めて検証する「運政審答申」
「タクシー活性化と発展」を妨げたものは…

 タクシー事業法の制定に向けて、タクシー業界内では野田新内閣の発足をいまのところ好感する声が少なくない。他方、臨時国会の召集日程を巡り本稿締切時点では与野党間に紛糾の兆しも窺える。同事業法案の詳細については非公表の現時点では論ずるまでもないが、タクシー適正化新法の名の下に実質的な再規制がスタートしてから早くも丸2年が経過しようとしている。そこで今回は、タクシー規制緩和の起点となった旧運輸省時代の運輸政策審議会答申(平成11年4月9日付「タクシーの活性化と発展を目指して」〜タクシーの需給調整規制廃止に向けて 必要となる環境整備方策等について〜)を振り返りつつ、答申の趣旨はどのように実現し、どのように挫折したのか否かを検証してみることにした。

なぜ、いま運政審答申なのか
 タクシー業界は全タク連において富田昌孝会長をトップとする執行部体制となって以来、懸命に再規制運動を展開してきた。それが功を奏してか、交通政策審議会でのタクシー事業を巡る諸問題に関する検討ワーキンググループ答申(平成20年12月)を根拠にした与野党全会一致によるタクシー適正化新法の成立、施行を見、自主的な減休車に取り組んだ。しかしながら言うまでもなく同法は「地域と期限を区切った上での特別な措置」を実施するものであり、タクシー事業の根本的な枠組みは「規制緩和」の精神のままなのである(ただし、運賃部分に関しては道運法の改正を待たず、行政による法運用の見直しで、自動認可運賃の幅が圧縮され、下限割れ運賃採用事業者は全国で約3分の1以下に減っている)。
 自主減車の効果は全国的に見ればまだら模様であり、そのことをもって業界労使は「適正化新法だけでは不十分。特定地域の指定が解除されたらどうなるのか?」として、民主党タクシー政策議員連盟を中心にタクシー事業法の制定を強く求めている。だが、この適正化新法の執行に当たり相当多数の法人タクシー事業者が減休車に自主的に協力したにせよ、総論には同意しつつも、少なからぬ事業者が「規制緩和の総括なくして自主的に減休車せよとは何ごとか」と思っていることもまた事実である。
 そこで改めて、タクシー規制緩和はいかなる世情の下で実行されるに及んだのか、また、その推進のバイブルとなった運政審答申に何が書かれ、それがどの程度実現し、またどのように挫折したのか確認しておく必要があるだろうと考えたわけである。
 検証に当たっては、運政審答申から直接の引用部分については「斜体文字」で表記することをあらかじめお断りしておくとともに、それと対比するように本紙としての評価を記述する形を採りたい。
 平成11年の運政審答申は「T はじめに」「U タクシーの現況と今後のあり方」「V 需給調整規制の廃止後におけるタクシー制度のあり方」「W おわりに」の4部構成となっている。第T部でタクシー規制緩和に至る経緯が、第U部では「1.タクシー事業の役割及び近年の状況」「2.タクシーの今後のあり方」―に分けられ、第V部は「1.参入・退出制度のあり方」「2.個人タクシー制度のあり方」「3.運賃制度のあり方」「4.輸送の安全の確保のあり方」「5.運転者の質の確保方策」「6.利用者保護のための措置」「7.事後チェックの充実」「8.関連する事業のあり方等」―などで構成されている。第W部では「答申を踏まえた制度設計を強く望む」との締めくくりの言葉が述べられている。

タクシー規制緩和の背景
 規制緩和の流れは、古くは昭和の時代の土光臨調まで遡る。その成果としては電電公社の民営化や国鉄の分割民営化などが成功例として評価が定着したものと言えよう。紙幅の関係であまり深く掘り下げる余裕はないが、細川首相の非自民・8党派連立政権成立後は規制緩和の流れは政権がどう移り変わろうとも決定的なものとなり、そうした空気の中でタクシー規制緩和も論じられるようになった。具体的な答申の記述を見ると、

 タクシーのみならず、交通事業全般に共通して、さらには我が国の産業政策として、市場競争を通じた経済社会の活性化を図ることが指向されており、そのために、社会全般における競争制限的な規制のあり方を見直すことが重要な課題となっている(「I はじめに」より)。

 業界や運輸行政そのものが主体的に規制緩和に取り組んだというよりも、「どの産業でも規制緩和しているから、タクシー事業でも検討しないわけにはいかない」というニュアンスも感じられる。平成9年の政府の規制緩和推進3カ年計画でタクシーの需給調整規制を平成13年度までに撤廃することが閣議決定され、本答申をもってそのための具体策が提言されている格好だ。答申の骨子素案公表までには全国各地でいわゆるミニ運政審が開催されて、ガス抜きが行われてきた。

タクシー事業に対する現状認識
 規制緩和以前のタクシー事業に対する現状認識はどのようなものだったのだろう?答申の記述は、

 タクシーは、バス・鉄道等の大量輸送機関の補完的役割を果たすとともに、ドア・ツー・ドアの機動的・個別的公共輸送機関として国民生活に定着している。
 また、近年の高齢社会の中で福祉輸送サービスに進出する事業者が増加してきており、タクシーの新たな役割として注目されている。
 さらに、介護サービスや救援事業等のタクシーの機動性を活かした関連サービスが出現するとともに、個人タクシーにおけるマスターズ制度等事業者団体が自主的に質の向上を目指す動きも始まっている。
 一方、近年の景気低迷の下で輸送量は低下傾向にある等総じて厳しい経営状況が続いているが、タクシーは、コストの約8割を人件費が占める典型的な労働集約型の産業であり、運転者の賃金体系が基本的に歩合制で事業収入が運転者の労働条件に直結していることから、他産業に比べると厳しい労働条件となっている(U タクシーの現況と今後のあり方「1.タクシー事業の役割及び近年の状況」から)。


 いずれもタクシー規制緩和から10年が経過した現在においても当てはまる事柄ばかりである。行政の、あるいは外部からの「タクシー観」というべきものは大きく変わったとは言えないようだ。また、事業規制の枠組みそのものについては次の記述が見られる。

 これまで、タクシーについては、一定の地域毎に需要と供給を調整して過剰な参入を規制する免許制や総括原価主義に基づく運賃の認可制がとられてきたが、このような規制は、事業運営の意欲と事業遂行の能力のある事業者の参入や事業の拡大を制限し、事業の活性化やサービスの多様化を阻害する要因となる側面もあった。
 このため、現行制度の下でも、運輸省では、事業区域の統合・拡大、最低保有車両数の縮減を行うとともに、需給調整や運賃設定の弾力化を進めており、その効果も現れつつあるが、事業全体への広がりは不十分である(同上)。


 考え方としては間違っていないし、市場におけるプレーヤーの固定化そのものが良くないのだという発想も是とするが、規制緩和から10年後の結果を知った上でなら、「免許制が必ずしも事業活性化を阻害してきた」とまで言い切れないし、規制緩和によってこうした阻害要因が除去できたとは到底言えないだろう。
 また、免許制や総括原価主義の欠点を上記のように指摘してはいるものの、事実関係としては道運法の改正を待たず、行政運用によりなし崩し規制緩和が実行されてもいる。例えば、東京では「関東運輸局は平成9年12月11日、昭和39年以来33年ぶりに、東京特別区・武三交通圏のタクシー事業への新規参入を認め、9社合計304両に免許を与えた」という事実があり、法改正を経ないでの規制・制度運用の実態としての大幅な変更は規制緩和・強化いずれの側でも行われてきた。
 さらに、需給調整とともにやり玉に挙がった総括原価主義についても運賃競争の激化を経た後、平成19年からの運賃改定作業やその後の交政審タクシーWGでの論議等を通じて再び「総括原価主義にかわり得るものがない」として相対的に評価する機運が高まっているようにも見える。

では、どうすべきか?
 大幅な規制緩和を経験していない、今から10年以上前の時代での現状認識から導かれた処方箋が本答申だが、その現状認識に基づいてどのように主張しているのか?

 タクシーは、本来、個々の利用者のニーズに対応したきめ細かで多様なサービスを提供することが可能な事業である。近年の景気低迷により厳しい経営状況が続いているが、競争を促進することにより、事業者の創意工夫を発揮させ、サービスの向上と事業の活性化を図っていくことが重要である。
 このため、新規参入や事業の拡大が可能となるよう需給調整規制を廃止し、競争を促進することが必要である。これにより、利用者にとって利用しやすいサービスが提供され、タクシーの利用が促進されることが期待される。
 一方、タクシーにおいても輸送の安全確保は今後とも最重要の課題であり、また、タクシーは、利用者と運転者が1対1となるサービスであること、運賃は最終的には降車の際にしか明らかにならないこと等から、利用者が安心して利用できることが重要である。
 さらに、流し営業中心の大都市や車庫待ち営業中心の地方部等地域によって実情に違いがあること、また、歩合制等を背景に増車に伴う固定費が小さいため事業者の増車意欲が極めて強いといった特性があり、供給過剰になりやすいことに留意する必要がある。
 これらに十分配慮しつつ、需給調整規制廃止後のタクシー制度のあり方について、輸送の安全確保や利用者保護を中心に検討していくことが必要であり、規制の必要性と効果を十分に検討し、有効な規制のあり方を検討することが適当である。
 今後の国の関与については、事業規制は、必要最小限にとどめるものとし、かつ、できる限り明確な基準により執行すること、可能なものは事前規制から事後的チェックへの転換を図っていくことが適当である(U タクシーの現況と今後のあり方「2.タクシーの今後のあり方」から)。


 大いに苦情を述べなければならないのは、あたかも免許制の時代、タクシー業界には競争がなかったかのような記述がされている点であろう。大都市部における流し営業主体の地域では他産業でイメージされる競争はいわゆる無線タクシー市場に限定される(チケットによる拾いでの乗り込みもここに含む)。
 例えば東京の場合、高度なニューサービスを標榜した新規参入はほとんどなく、大半は非無線による流し営業一本槍によるものである。運政審やその後の交通政策審議会答申(タクビジョン小委報告)が糾弾してきた古いビジネスモデルによるプレーヤーの増加が大半であるだけでなく、数少ない良質な新規プレーヤーが市場の選択機能によって硬直した古いプレーヤーを退出に追い込むことはまったくなかったことが指摘される。少数の退出事例は後継者難やサイドビジネスの失敗による負債増のためだ。一応、地域による特性の違いや歩合制賃金による事業者の増車意欲旺盛なことなど、市場原理が有効に機能しにくいことを認識していることも窺わせながら、それでも規制緩和しなければならない事情は捨象して「規制緩和後の制度は利用者保護を中心にしたものとし、事前規制から事後チェックへ」との結論に至っている。

運賃問題の発火点としての答申
 タクシー適正化新法の施行と同時に同法附則に基づき道運法の運用見直しにより、全国一律に下限運賃が引き上げられる措置が講じられた。運賃の実質自由化政策は規制緩和の目玉政策であったはずなのだが…。答申の記述では、

 運賃設定は、事業経営上最も基本的な事項であり、できる限り事業者の自主性や創意工夫が尊重される制度とすることが必要である。
 その一方で、タクシーにおいては、事前に利用者の選択が困難な場合が多いことから不当に高い運賃の設定を防止するため運賃の上限を規制することや、特定の旅客に対する不当な差別的取扱いを防止することが適当である。
 また、タクシーにおいては運転者の賃金が基本的に歩合制となっており、競争の激化により運賃のダンピング競争が生じた場合には運転者の労働条件の悪化に直結し、安全で良質なサービスの確保が困難になる可能性がある。このため、運賃の下限を設定したり、発動の要件を明確にした上で事業者の設定した運賃について変更の指示が行える制度とする等の措置を検討することが適当である(V 需給調整規制の廃止後におけるタクシー制度のあり方 「3.運賃制度のあり方」から)。


 原文の前段は「運賃は事業者の創意工夫に基づく自由化」という原則を謳い、中段で上限規制、下限規制の導入を提言している。また下段では「必要に応じて運賃変更命令も発動があり得る」としている。当時の業界としてはこれらの文言から自動認可運賃の範囲内での競争が最大限のもので「それ以上も、それ以下もない」と誤解した。実際には下限を下回る場合には「個別審査」で制度設計されることとなっており、当時の運輸省側にも個別審査への業界の誤解があることはある程度承知していたものと推察されるが、誤解を解くと紛糾するため、そのままにしておいたようにも見える(今にして思えばという意味だが)。
 過度な運賃競争によるとされる諸問題については、この10年を振り返る限り東京よりも大阪の方がわかりやすい具体例と言えるだろう。自動認可運賃の幅の数+遠距離割引の組み合わせ、加えて下限割れ運賃などで一時は40数種類あるとも言われていた。タクシー適正化新法の施行と同時に、交政審答申を受けて道運法の運用が見直され、適正化新法の附則による道運法9条の3の読み替えによって、タクシー運賃は再び「適正原価+適正利潤」そのものへと変化した。その結果、下限割れ運賃採用事業者数は全国的に減少した。大阪では早い段階での低額運賃認可を得た事業者が多かったことから、恒久認可の下限割れ運賃事業者が他地域より相対的に多く、絶対数としてもまだまだ多い方だ。そうした中、運賃競争の激化だけに原因を求めてよいかどうか様々な見方があるが、乗務員の労働条件の悪化については運政審答申でも指摘されていた以上の状況になっており、近年では最低賃金と生活保護水準とがせめぎ合う状況の中で、経営者も歩合制をよりどころに、ただ乗務員にしわ寄せしていればなんとかしのげるという時代ではなくなりつつある。
 「運賃を下げるのは何故か」と問いかけて、素直に考えれば「供給過剰で食べていけないから」「値下げで実車率を上げる必要があったから=他社の顧客を奪ってでも生き残りを図る必要があったから」ということになろう。完全なる新規需要を創出できるほどに(=つまりは他の公共交通機関からの乗り換えを促し得るほどに)安い運賃は設定することそのものが(制度的に可能であっても)難しいと考えられる。
 結局、答申前段に盛り込まれた「事業者の創意工夫を尊重する」というくだりで期待を込めたほどには運賃自由化の効果は発揮されなかったと評価しても良いだろう。個別に見れば値下げした事業者の側で実車率が上昇したとか、一定の賃金上昇が見られたということはあっただろうと想像できるが、その後の交政審などで論じられてきたのは地域の公共交通機関としての機能のことであり、個別企業の業績向上とその従業員の賃金上昇という成果があったとしても、それが他のすべての事業者の業績悪化と著しい労働条件低下と引き換えであるなら、公共交通機関の政策論議としては「失敗」の烙印を免れない。また需要創造、顧客創造という例で言えば、特定の需要(顧客層等)の掘り起こしにターゲットを絞った戦略的な割引などはほとんど出現することなく(あるいは追随を生むような新しいビジネスモデルとしての成功例はなく)、ただのべつ幕なしに安い=消耗戦を闘うための武器としての低額運賃を多数出現させただけでもある。それも市場というものであることには違いないが、答申が予定した最も美しい形での市場原理の機能の仕方は現実のタクシー業界では見られなかったと言えよう。
 この後、第V部では制度設計の具体的なあり方、方向性を示しているが本稿では詳しく紹介する余裕がない。答申そのものは誰でも入手が可能なものなので、興味がある方は原本をご覧いただきたい。
 こうして改めてチェックしてみると、タクシー事業の規制緩和で市場原理が十分有効に発揮しきれないとするならば、その原因はこうだという具体的なポイントが運政審答申にもすでに記述されている。乗務員の賃金は歩合制であり、増車における固定費負担リスクが少なく事業者に旺盛な増車意欲がみられること、市場の特性として流し営業や駅待ち営業中心の地域では利用者によるタクシーの選択性が低いかほぼ皆無とされていることなどに触れている。

総括がないままに…
 規制緩和がうまくいかないとすれば原因となる要素はこれだろうという点についてはほぼ正しく言い当てているが、それでも失敗した(運輸行政当局は失敗していないと言っているが。また規制緩和推進派も失敗していないと言い、奇妙な一致が見られるが)のは、なぜなのか? 少なくともタクシー適正化新法施行後、自主的な減休車を強く求められ、4.13通達による調査、監査に直面している少なからぬ事業者にとっては、その「総括がないままに」という点こそが大きな障害なのであろう。

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No411. 9月12日号 ニュースヘッドライン
■巻頭人物 :田中 亮一郎氏/全タク連・地域交通委員長
■気になる数字 70円台/燃料高騰の打撃を一定程度軽減してきた円高だが…
■トピックス:いま改めて検証する「運政審答申」〜「タクシーの活性化と発展」を妨げたものは…
        :業務の高質化図るNASVA〜連載第1回・カウンセリング付き一般診断を受診しませんか
        :災害に強いタクシー無線に期待〜総務省総合通信基盤局・田原康生課長に聞く
        :立場を超えて共通点見出せるか〜大タ協・労使懇談会
        :「観光タクシー」を東京のブランドに〜昭栄自動車のチャレンジ
        :バッテリー会社が車を造る時代〜ユアサM&B・松田社長が語るEV車の今後
■東西往来            
        :懇親ボウリングで事故防止意識高揚
        :敵同士でなく…
■シャッターチャンス :現状で機能していないのならば
                 :ダウンサイジングの果てには…
               :トップ交代で視界は晴れるか?
               :アンダーバーも上げてほしい
■この人この言葉   :川野 繁氏、矢野 武氏、工藤 司郎氏、兼元 秀和氏
■アラカルト:<続大阪タクシー産業盛衰記> 岡本頼幸氏を偲んで    増田和幸氏に聞く
          <新・関西ハイタク裏面史> 「ギューちゃん」さながらに  志摩哲二
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交通界ファックスプレス(『交通界21』特別サービス号/ 週3回配信)

 

Faxpress 関東版
特区・武三4万4712円、2%増も…
   総運送収入5.8%減 3、4月除き最悪
     7月の全社輸送実績、総需要の減を減休車が下支え

【 東京 】東京乗用旅客自動車協会(富田昌孝会長)はこのほど、7月分の全社輸送実績をまとめた。特別区・武三地区では日車営収4万4712円(税込)で前年同月比2%増収。多摩地区では4万1239円(同)で同1.8%減収だった。一方、総運送収入の推移をみると特別区・武三地区では7月は5.8%減少しており、東日本大震災の影響が強く出たとみられる3月の16.8%減、4月の15.1%減を除くと今年に入ってから最も悪い数字になっており、震災による外出控えなどの直接的影響は脱したものの、電力不足などの間接的影響や、ベースとなる経済の冷え込みを総合すると総需要への影響は震災前よりも深刻化しているようだ。多摩地区でも同様の傾向がうかがえる)。
 今年1〜7月の全社実績を眺めてみると、やはり東日本大震災の影響をもろに受けた3、4月の指標の対前年比が大きく乱れていることが改めて確認できる。総需要(総運送収入)は特別区・武三地区の場合で1月4.5%減、2月4.1%減、3月16.8%減、4月15.1%減、5月4.6%減、6月1.5%減、7月5.8%減―となっており、総需要の減少を引き続き、事業再構築(減休車)で下支えする構図が続いている。一方、需要減少が続く中で迎車回数は3、4月を除いて1〜4%台のコンスタントな増加を示している。無線配車回数の増加については、スマートフォン配車の普及による一部流し営業利用者の無線への取り込みを指摘する声もあり、どの程度のプラス要因と言えるのかも注目される。このほか注目される点では1回当たり実車キロが震災前に比べやや伸びていることが挙げられるほか、各事業者の事業再構築進展に伴い「実際に動いている車を減休車する割合が高まった」ためか、一時87%台を超えた実働率がやや伸び悩みに転じつつあるようだ。
 多摩地区の総需要(総運送収入)動向はほぼ特別区・武三地区と同じような動きを見せているが、減休車の取り組みへの違いから日車営収はほぼ一貫して前年同月比で伸び悩み、3、4月など震災影響の直撃を受けた月以外でも減収が見られる。総運送収入の前年同月比は1月2.5%減、2月3.8%減、3月12.6%減、4月14.8%減、5月3.7%減、6月3.2%減、7月5.8%減―で、特別区・武三地区とほぼ同じ状況。台当たりの効率の違いは事業再構築の取り組みの違いとしてストレートに指標に反映されているようだ。東旅協の毎月の輸送実績は運賃ブロック単位で公表されており、多摩地区の場合、3交通圏別での公式な分析も待たれる。
〔9月10日関東版掲載〕  <バックナンバー一覧へもどる>

2011年9月10日号 関東版 ニュースヘッドライン
【 東京 】特区・武三4万4712円、2%増も…/総運送収入5.8%減 3、4月除き最悪/7月の全社輸送実績、総需要の減を減休車が下支え
【 東京 】減休車の目的は賃金アップ/東旅協・富田会長「さらなる協力を」
【 東京 】国交省、事務次官に宿利氏就任へ
【 東京 】動体視力アップで危険予知/事故防止責任者講習会開く
【 東京 】街頭営業適正化で実施要綱改定/都個協、8項目の指導対象明記
※東京都特別区・武三地区、タクシー輸送実績の推移
 
2011年9月9日号 関東版 ニュースヘッドライン
【 東京 】流しと無線、分離して検討へ/「選択性」外し、サービス向上ツールに/ランク評価制度、東旅協・正副会長会議
【 東京 】「タクの日」10%割引案も/「タクシー100周年」で東旅協
【 東京 】死亡事故続発で注意喚起/東旅協・交通事故防止委
【 東京 】廃タイヤ処理の制度変更など説明/全タク連・技術環境委
【 東京 】24年の事故防止標語決める/交通共済・事故防止対策委
【 東京 】東京都の最賃公示、837円
【 東京 】接客マナー「プレコンテスト」/全個協関東、レベル向上へ準備進む
【 東京 】事務所内に「AED」設置/八洲自動車、講習会も計画
【 東京 】被災地支援でLPG車両/都スタ協等加盟事業者が取り組み
【 東京 】国交省人事(5日付)
 
2011年9月7日号 関東版 ニュースヘッドライン
【 東京 】タク業界自らが代行業に進出を/「二重勤務」による過労などを懸念/全タク連・地域交通委で田中委員長
【 東京 】国交副大臣に奥田、松原両氏/野田内閣、政務官も出揃う
【 東京 】衆院国交委員長は伴野氏に
【 東京 】民主党役員人事
【 東京 】バリアフリー研修会を計画/東京無線、新テキスト使用
【 東京 】マニュアル検討へ分科会/東旅協・災害対策委
【 東京 】東京業界のブランドに/昭栄自が「観光タク」パンフ
【 東京 】新たにデジタル移行窓口設置など/全自無連、メーカー6社に要望
【 横浜 】リーダーの自覚で事故減少/安マネ活動3年目の大栄交通
【 東京 】実用興業、事故防止へ結束/安マネ・ボウリング大会
【 東京 】日交労常盤台支部長に上野氏/千住支部は藤田氏が再任
 
2011年9月3日号 関東 ニュースヘッドライン
【 東京 】制度の存廃問う議論には至らず/「存続前提に見直し」が大勢?/ランク評価制度巡って、東旅協・専門委員長会議
【 東京 】同情的だが冷めた見方も/新潟事件巡り都内中小事業者
【 東京 】国交相に前田武志氏/野田・新内閣が発足
【 東京 】タクシー事業法にも希望?/東京業界、新内閣に概ね好感
【 東京 】竹歳次官が官房副長官就任/国交省、今後の人事に注目
【 東京 】優良乗務員74人など/全タク連、10月に表彰式
【 静岡 】運動方針策定へ討論集会/日交労「プリウス」で意見交換も
【 東京 】会計の透明性と情報開示/三陽自労組・幸田委員長
【 東京 】「ISO39001」紹介/NASVA安マネセミナー
※東京の増減車情報
 
2011年9月2日号 関東版 ニュースヘッドライン
【 東京 】「存廃論議から始めよ」の声強く/利用者の選択性向上に寄与せず/ランク評価制度の見直し巡って
【 東京 】乗務員高齢化で健康管理徹底を/全タク連・交通安全委員会
【 横浜 】減車1615両、休車2579両/特区・武三の事業再構築
【 東京 】交通事故抑止で5県協会表彰へ/全タク連、10月の事業者大会で
【 東京 】会館売却を再確認/チェッカーキャブ取締役会
【 横浜 】関運局、許可取消の聴聞公示
【 東京 】「災害に強いタクシー無線」目指す/全自無連がマニュアル作成委
【 東京 】大和自交、第1四半期連結業績
【 東京 】中労協・中労研が夏季セミナー
【 東京 】EVによるグリーン化促進事業/国交省が2次公募
【 東京 】「地震災害対応マニュアル」/境交通、早朝点呼で配布
 
2011年8月31日号 関東版 ニュースヘッドライン
【 東京 】国交省の支援“拒否”に落胆/「2.10通達」はタク業界の為ならず/新潟の事業者、一層の窮地に
【 東京 】EV導入機運の高まり期待/エコ乗り場設置で根本委員長
【 東京 】蓼科のホテル等売却へ/グリーンキャブ系列会社
【 東京 】LPG9月CPは小幅下げ
【 東京 】新宿駅西口で恒例の街宣活動/私鉄東京ハイ・タク労連
【 東京 】今年も「サービス強化月間」/日個連が11月、服装・接遇など
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交通界ファックスプレス(『交通界21』特別サービス号/ 週3回配信)

 

Faxpress 関西版
制裁金廃止、罰則規定全面見直しへ
    関協、年内目途に新ルール検討

【 大阪 】関西ハイタク事業協組(山田健理事長)は、同協組罰則規定の制裁金制度を廃止するとともに、合法的な新ルールの確立に向けた検討に入る見通しとなった。今月15日に開く理事会および総会で、昨年9月に改定した制裁金倍増などの罰則規定を元に戻した上で、合法的な新たな罰則規定の検討作業を進め、12月総会への提案を目指す。
 山田理事長が9日、大阪市淀川区の幸福交通で開いた「関協の制裁金をなくす会」(代表=金光秀則・関西中央自動車労組委員長)との協議の中で方向性を示した。
この日の協議には関協側から、古知愛一郎・副理事長、高月廣海・無線委員長に加え、山田理事長が初めて参加。前日8日の記者懇談会で現行の罰則規定を問題視していた関西中央グループ・薬師寺薫代表の発言にも触れながら、15日の理事会に、昨年9月に改定した罰則規定を元の状態に戻すことを提案し、各理事の了承を取り付けることを約束し、さらに「時間はかかる」としながらも、制裁金制度の違法性を認めた上で、現行ルールに変わる合法的な制度の確立を目指すことを明言、12月の決算総会まで議論を重ね「同総会で提案できるように尽力する」とした。
 これを受け「なくす会」側は、集団訴訟の前哨戦との位置づけで12日に予定していた関協クライアントをターゲットにしたビラ撒きなどの活動を中止、まずは15日の理事会および総会での対応を見守ることにした。
 同会メンバーで協議に出席した自交総連大阪地連の沢田茂・特別執行委員は同日、本紙の取材に「今回ようやく、山田理事長以下幹部の方から、制裁金制度の廃止と合法的な新ルールの確立を目指すとの回答を得たので、まずはそれを信じて、12日のビラ撒きや集団訴訟等はいったん中止することにした。15日の理事会で、果たしてその通りの具体的な提案が行われるのかどうか。そのあたりの動きなどを見極めた上で、今後の対応を考えていくことにした」とコメント。これまで加盟事業者が各乗務員から徴収した制裁金の返還については、引き続き求めていく方針だ。
〔9月10日関西版掲載〕<バックナンバー一覧へもどる>

2011年9月10日号 関西版 ニュースヘッドライン
【 大阪 】制裁金廃止、罰則規定全面見直しへ/関協、年内目途に新ルール検討
【 大阪 】10月から「低削減率」対象に/大運支局の対面調査
【 東京 】国交省、事務次官に宿利氏就任へ
【 京都 】実車入構限定の社会実験/京都駅北口乗り場で実施へ
【 大阪 】「カイゼン作戦」で周知徹底/大タ協・交通安全委
【 大阪 】大タ協、街頭活動の最終確認
【 大阪 】SSK交通が役員変更届/株式譲受の珊瑚・山根氏が社長に
【 京都 】乗り場の再編・統廃合へ/調査結果踏まえ業務センター
【 大阪 】カイゼン作戦とチャブリ無策/壽タク・浦木山社長が指摘
【 大阪 】北新地、合同街頭指導は30日
【 大阪 】釣銭関係のトラブル目立つ/大運支局 7、8月の苦情答申
【 大津 】高齢者割引、追随して申請
【 大津 】乗務員の意識変化で事故減少/オプテックス『セーフメーター』
※京都の増減車情報
 
2011年9月9日号 関西版 ニュースヘッドライン
【 大阪 】第2回「カイゼン作戦」16日に/近運局、交差点等の「客扱い」厳しく
【 大阪 】事業者大会でタク特法説明へ/大阪府警とともに出席の近運局
【 大阪 】南地の合同街頭指導はきょう実施
【 神戸 】減休車事業者が納得する対応を/兵タ協、松本会長らが記者会見
【 大阪 】次回理事会で「次の問題」議論を/関西中央G・薬師寺代表
【 神戸 】神戸予選会に14人参加/兵タ協「接客コンテスト」
【 大阪 】関協の制裁金問題、きょう最終交渉
【 京都 】運賃問題の議論求める声多いが…/京乗協、全事業者アンケート
【 大阪 】ファミリア550円、戎570円/近運局、下限割れ審査で運賃査定
【 大阪 】バッテリー会社がEV造る時代に/ユアサM&B・松田社長
 
2011年9月7日号 関西版 ニュースヘッドライン
【 大阪 】懇親より議論時間を/大タ協・労使懇、本音のぶつかり合いで延長戦も
【 大阪 】事故防止と輸送秩序改善へ/大タ協、13日に緊急事業者大会
【 東京 】国交副大臣に奥田、松原両氏/野田内閣、政務官も出揃う
【 東京 】衆院国交委員長は伴野氏に
【 大阪 】制裁・罰則規定は適宜見直し/関協、サービス向上・懲罰委
【 大阪 】NASVA、大阪で安マネ講習会
【 奈良 】申請の足踏み、2カ月に/生駒・中部の特定事業計画
【 京都 】バリアフリー化功労で近運局表彰/キャビック「ケア&ケアタクシー」
【 大阪 】「カイゼン作戦は目的絞れ」の指摘/定年制に「逃げ腰」の当局批判も
【 大阪 】大タ協、メールで情報提供/ペーパーレス化で検討
【 京都 】「回収中止」の経緯説明?/運賃アンケート巡り京乗協・経営委
【 大阪 】適性テスト踏まえて指導/ひかり交通が安全講習会
【 大阪 】星田交通、営業所・車庫を再編
 
2011年9月3日号 関西版 ニュースヘッドライン
【 大阪 】自衛策と利用者への周知が不可欠/北新地「カイゼン作戦」で大阪業界
【 東京 】野田内閣の国交相に前田武志氏
【 大阪 】「定年制」含む具体論に期待/今後の労使懇で自交大阪・庭和田氏
【 大阪 】交友会、委員会構成決まる
【 大阪 】「赤バス」だけでなく「路線バスも」/大淀交通・杉山社長が代替で提案
【 大津 】免許返納高齢者割引/滋タ協などサービス開始
【 大津 】年度内にUD15両体制に/近江タク、全営業所に配置へ
【 大阪 】担当者が勝手に決済/兵庫陸運部、不適切処理が判明
【 大津 】草津駅東口の整備で説明会
【 大阪 】近運局、5社を車停処分
※大阪、京都、和歌山の増減車
 
2011年9月2日号 関西版 ニュースヘッドライン
【 大阪 】チャブリよそに4社・5両が網に/北新地「カイゼン作戦」物々しく
【 大阪 】「正直者ガバカ見ぬよう」/チャブリの排除が不可欠
【 大阪 】制度廃止の次に何があるのか/大タ協・労使懇、薬師寺氏が指摘
【 大阪 】下限割れ「8月中処分」成らず/近運局、法人10社・個人17者
【 大阪 】70歳以上が3500人超える/大阪の乗務員
【 大阪 】「なくす会」との協議、来週中にも/制裁金問題で関協執行部
【 京都 】使用登録20万枚達成の勢い/エムケイ「タクポ」導入10カ月
【 大阪 】「プリウス」前面に新規開拓/ふれ愛交通が病院、施設など
【 京都 】流しは中型主体で/開業3カ月の京都西交通
【 大阪 】NV200・バネットタクの試乗会/大タ協、9月12日舞洲アリーナで
【 大阪 】「ISO39001」セミナー
 
2011年8月31日号 関西版 ニュースヘッドライン
【 大阪 】あらゆるツール使い協力要請/澤井・自交部長、本紙との会見で供給過剰の解消に意欲
【 大阪 】交差点での客扱いに不安/「カイゼン作戦」前夜の街頭指導
【 大阪 】大阪市域・中型2万9780円/大タ協・7月輸送実績
【 大阪 】遠割見直しなど「事業者のやる気」/自交大阪・庭和田書記長
【 大阪 】「赤タク」代替なら運賃が問題に/ポスト赤バスで指摘
【 大阪 】死亡事故多発で注意喚起
【 東京 】LPG9月CPは小幅下げ
【 神戸 】新人乗務員にも観戦させる/接客コンテスト、信原・実行委員長
【 大阪 】スマートフォン対応で効果大/ひかり交通が導入の『タッチ探』
【 大阪 】携帯無線「1日1千本」目指す/本格稼働でオービーシーG
【 京都 】期間限定のくじ付きタクシー/京都と宇治の第一交通
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