【 名古屋 】名古屋エムケイ（青木信明社長、名古屋市北区）が提起した最高乗務距離訴訟の判決言い渡しが５月31日、名古屋地裁（福井章代裁判長）であった。判決は、原告の名古屋エムケイが日勤乗務員の最高乗務距離270キロ（高速道路走行は除外）だけでなく、隔勤乗務員も360キロを超えて乗務させることができる地位を有することを確認した上で、中部運輸局長が原告に対し最高乗務距離オーバーで車停や事業停止、許可の取消処分をしてはならないとし、平成22年６月７日付の車停処分（35日車）のうち、最高乗務距離違反や増車を理由とした加重処分にかかる部分（25日車）の取り消しを命じた。距離規制の公示撤廃請求については、申立の適正を認めず却下した。訴訟費用は４分の１を原告、４分の３を国の負担とした。エムケイ側は「完全勝利」と評価した。全国５つの裁判所で係争中の距離規制をめぐる訴訟で初めての判決となった。
　閉廷後、原告側は地裁近くのホテルで記者会見を行った。代理人の水野武夫弁護士は、「公示の取り消しは却下されたが、これはどちらでもいい。『完全勝訴』という理解。（距離規制が）仮に合憲だとしても、名古屋地区を指定する合理的理由はなく、中部運輸局長の判断は、その前提となる事実の基礎を欠き、社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものであり、裁量権の範囲を逸脱、または濫用したというべきで、本件公示に基づく本件乗務距離規制は違法だ―という訴えが認められた」と説明した。
　今回の判決による他のタクシーや社会への影響についての質問には、「距離規制をする地域がどういう地域なのかということを慎重に判断してやらないとダメで、名古屋についてはその必要はないとした。『行政の安易な規制は許されませんよ』という警鐘を鳴らした。その意味では他にも影響する。国とエムケイで係争しているので、エムケイについては距離規制を超えて走ってもいいとなったが、他のタクシー会社にその判決の効力が及ぶかというと、法律的には及ばない。しかし実際、判決が確定すれば国の方が、当然他のタクシー会社にも影響が及ぶようにする。また（距離規制も）増車訴訟も各地であり、これから出てくる判決について当然一定の影響はある」とした。
　青木社長は、「行政訴訟をたくさん抱えており、代表的なものは福岡と名古屋の運賃訴訟。これも有り難いことに全面勝訴した。今回の距離判決は非常に意義がある。基本的に他社に悪い影響を及ぼすことはない。通常の営業の権利をわれわれ事業者側に取り戻したというのが今回の判決の実体だ。道路運送法が平成14年に改正され、要は事業者保護から利用者保護に変わった。国が『これからは利用者第一、事業者ではなく利用者本位に立つというスタンス』になったわけだから、利用者が困るようなこと、乗りたいタクシーを選べない、選ぶ権利を『略奪』するような規制は裁量権の逸脱という判決をいただいている。今回の判決は、利用者の保護、事業者間の自由で活発な競争を推進できるようにした」と評価した。

〜青木社長「天王山」の関西にも影響
　青木氏はその上で、「全国の他の同類訴訟に対する影響は分からないが、天王山は関西（近畿）。名古屋の距離規制は270キロだが、近畿は250キロ。名古屋は高速利用距離はすべて除外されるが近畿は高速利用の50キロまでは全部算入される。これはまさに500円などの低額運賃のタクシーに長距離のお客様が集中する。そうすると走行距離が伸びる。そこを狙い撃ちしているのは明白。われわれは全国で走行距離規制裁判をやらせていただいているが、やはり天王山は関西。今回の判決の影響はゼロではないと思う」と述べた。
　エムケイグループでは、名古屋以外でも最高乗務距離規制訴訟を京阪神、札幌、福岡、東京の４カ所、増車による加重処分取消訴訟を神戸、札幌の２カ所で行っているが、このうち直近では７月４日の京阪神の250キロ訴訟と神戸の加重処分取消訴訟の判決に注目が集まっている。
〔６月１日関西版掲載〕
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