ハイヤー・タクシー業界専門情報紙  株式会社 交通界
2021年9月27日

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「週刊交通界21」毎月4回情報発信

― Uber Japan オンラインカンファレンス ―
MaaSが変える未来
   モビリティの将来像にタクシー業界は?

 ウーバージャパンは今月9日、オンラインカンファレンス「Uber Japan『MaaSが変えるモビリティの未来』〜産学官が連携して考える、モビリティの将来像」を開き、国交省総合政策局・石川雄基・モビリティサービス推進課長補佐の基調講演を聴き、その後ウーバージャパン・山中志郎・モビリティ事業ゼネラルマネージャー、日本航空・清水俊弥・デジタルイノベーション本部事業創造戦略部MaaSグループ長、ウィラー・村瀬茂高・代表取締役がそれぞれの事業紹介、それぞれが考えるMaaS像などについてプレゼンテーションを行った(プレゼンの概要は交通界ファックスプレス関東版9月11日号で既報)。 そこで、今号では各社プレゼンの後の産学官の参加者によるパネルディスカッションで何が語られ、何が語られなかったかを振り返り、MaaS及びそれ以外の分野を含めたそれぞれの思惑も浮かび上がらせたいと思う。

 カンファレンスの冒頭では、ウーバーテクノロジーズのアジア・太平洋地域代表を務めるプラディープ・パラメスワラン氏があいさつ。その内容は、本号の巻頭言の通りだが、実際にもう少し長く話されており、カーボンニュートラルへの対応が必須となること、世界中のウーバードライバーの使用車両を100%電気自動車に置き換えていくことなども重要な戦略の一つとして明らかにされている。
また、自民党MaaS議員連盟の甘利明会長(衆院議員)が祝辞を寄せた。甘利氏は、「このセミナーを通じて、産学官が一体となり次世代モビリティ社会を見据え、新しいモビリティサービスの普及促進が進むことを期待いたします」と述べている。

サービス内容の充実が先決
本紙既報部分を中心に振り返ると、国交省総政局の石川氏は基調講演の中で、地域公共交通の現状紹介や高齢者の外出への不安などの社会課題を示すとともに、地域公共交通は規制緩和から人口減少、高齢化を受けた成長の鈍化を経て活性化・再生へと舵を切る局面にあることなどにも触れたほか、MaaS普及には必須とみられるスマートフォンアプリだが、以前に比べて高齢者でもスマホを使いこなす層は増えているとの期待感を示しつつ、一方で、「スマホアプリはあくまで手段であって、サービス内容の充実が先決」との考えも示した。
ウーバージャパンの山中氏は、米国本社の設立からグローバルな事業展開の概要、日本国内でのタクシー配車事業の歩みなどを紹介し、国内では12都市で事業展開し、東京ではハイヤーの配車も行っているほか、全国的にフードデリバリーサービスを展開していると説明。その上でタクシー業界の課題として営業収入・輸送人員が長期的に右肩下がりとなっていると指摘し、「アプリがタクシー業界を活性化する」などと強調した。
ダイナミックプライシングの実証実験が間もなく始まることにも期待を寄せ、@オフピーク時の新規需要開拓Aドライバーの労働条件の改善Bユーザーの利便性向上―をその効果としてあげた。その上で山中氏は「テクノロジーがサステナブルな成長を実現する」と強調している。
日本航空の清水氏は、MaaSの意義について「本業のアセットを活用して新たな収益を創出する」と述べ、ウーバーと連携したJALアプリの活用、ウィラーとの連携にも期待を寄せた。

自社経営の鉄道各駅に「mobi」展開
ウィラーの村瀬氏は、MaaSの提供価値について、@持続可能な社会をつくるAカーボンニュートラルを実現するBマイカー保有者と非保有者の移動格差解消―をあげた。その上でワンマイル交通に適したモビリティの必要性を説き、自社の相乗り型オンデマンドサービス「mobi」の東京都渋谷区内での実証などにも触れた上で、「自分中心の移動サービス」「家族みんなで共有」「コミュニティをつくる」との事業特性を持ち、さらにこれをサブスクリプション(定額制)で提供することの優位性をアピールした。
また村瀬氏は、自社が経営する京都府・京丹後鉄道の例をあげ、各駅に各々のmobiを展開していけば、沿線全体を網羅するMaaSも構築できるとの意欲も示している。
プレゼン後のパネルディスカッションはウーバージャパンの西村健吾・政府渉外・公共政策部長がモデレーターを担当。プレゼンメンバーの3氏に基調講演を担当した国交省の石川氏、東京大学大学院の加藤浩徳教授を加えてそれぞれの意見を述べ合った。

オンデマンド型への進化
西村氏が最初に提示したお題は、「MaaSの将来像について」で、これに対して清水氏は、「自宅から目的地までシームレスでの移動について、検索から予約まで今後の5年間で実現されているだろう」としたほか、「既存の交通モードだけではなく、ファースト及びラスト・ワンマイルの移動手段についてもすでに実現しているはず。そしてさらにオンデマンド型へと進化していく」「10年後には『空飛ぶクルマ』も実現しているのではないか」との考えを示した。
これを受けて、村瀬氏は「5年後に向けたニューノーマルが始まる」とした上で、「新しいモビリティオプションができ、既存の交通モードと組み合わせてマイカー以上のものになる」との考えを示した。また、村瀬氏は「いかにしてオーダーメードの移動を作るかが重要。5年で事業モデルを作りたい。10年後には、カーボンニュートラルへの対応や移動格差の解消が実現できればと思う」と述べた。
両氏の発言を受けて石川氏は、「人口減少・少子高齢化の進む中で容易に移動できる社会とすることが重要課題になっている。また、自動運転など技術の進展もこの間著しいことと思う」などと述べた。
山中氏は、「5〜10年後のあるべき姿、大きな流れとしてはこの5年間で移動の問題は進行する。特に高齢ドライバーや人口の減少等による需要減などが主因だ。さまざまな取り組みが試されていくことだろう。公共交通の組み合わせによるシームレス化、パーソナライズが進むはず。サブスクリプションやダイナミックプライシングの活用も期待される。カーボンニュートラル対応も進んでいくだろう」としたほか、「選ばれたサービスが浸透していく10年になるだろう。そのためには官民連携が必要で、また、10年後を見据えると自動運転技術の活用が必要だ」との考えを示した。
加藤氏は、「5〜10年で考えると、5年後はいま進行している問題への対応が中心となるだろう。高齢化や人口減少、コロナ禍への対応の問題などだ」とした上で、「地方で公共交通を維持し、住民の足をどう確保するのか」「コロナ前のインバウンドは復活の可能性が高い」「公共交通維持にMaaSは貢献できる」などと述べた。また、加藤氏は「10年後となると、さらに技術の進展が反映される。2050年カーボンニュートラルと言っているが、10年後にはその辺りの動きも顕在化しているだろうし、自動運転技術についても同様だ」との見方を示した。

5〜10年後のビジョンへの課題
西村氏が示した2つ目のお題は、「各パネラーが示した5〜10年後のビジョンを実現するための課題」で、清水氏はMaaS構築に向けてデータフォーマットなどのレギュレーションを課題にあげたほか、電動キックボードや電動車いすなど新たなモビリティ、新しいサービスの安全性への不安をどう解消するかなどもあげている。
続いて村瀬氏は、「MaaSは社会課題解決のツール。その目的を達成したときに事業者に利益が配分される」との思想をまず語り、都市部であれば移動手段に恵まれているのかといえば、必ずしもそうではないと強調した上で、「交通事業者が同じ認識を持つ必要がある。その上で自治体、住民との連携が必要だ。MaaSは1社でやれるものではないが、交通事業者には民間各社があり、そこが難しいところ」「データは使う、使わないにかかわらず自社データは独占しておきたいものであり、この辺りの整理が必要だろう」との見方を示した。
ここまでの意見を受けて石川氏は、公共交通や移動サービスは今後も社会にとって不可欠なものであるとした上で、「放っておくと立ち行かなくなるものだ」との認識を示した。また、MaaSで利便性向上というと、ぜいたく品のように思われがちとの視点も提示した上で、「新しいものへの恐れに対しては、社会的受容性を高める努力が必要だ」との考えを示した。
山中氏は、何がベストの進め方になるかが最大の課題だとし、MaaSの開発、社会実装の進め方としては「完全自由市場」と他方では「地域社会に1つのMaaS、そこに皆が参加するという方法」の両極端をあげた上で、それぞれに問題はあるとし、「最適解はおそらくその中間になるだろう」と述べた。
また、山中氏はMaaSに参加する事業者へのインセンティブを重要課題にあげ、利用者にとってのベストが事業者にとってのベストではない場合があることを指摘。「MaaSに参加した交通機関・事業者が『何のために』と思ってしまうと先がない。きちんと収益が見えるようにする必要がある」と強調した。これらの意見を受けて加藤氏は各交通モードをスムーズにつなぐというMaaSの出発点は極めて利用者の目線に立ったものだとした上で、「日本は民間の交通事業者が活躍する世界的には非常に珍しい国だ」と指摘。データの共有などライバル企業同士で共同歩調を取ることの難しさや都市交通のあり方について共通認識を持つことの難しさ、さらにデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進についても官民が同じリテラシーを持つこと―などが課題になってくるとし、「理想の姿は誰にもわかっていない。公共側、民間側がどうあるべきか議論する場も必要だろう」と述べたほか、MaaS機能と統括するプラットフォームが寡占化しやすことも懸念材料の一つにあげた。

国交省を旗振り役に「日本モデル」も
西村氏からの最後のお題は、「課題解決へ、どんなソリューションがあるか」というもので、清水氏は、「誰かが主導していくことも必要だ。大所高所で考えるということであり、国交省には期待している」などとした。
村瀬氏も民間事業者2〜3社が集まって小さなMaaSを構築しても利用者の行動変容まで起こすことはできないとの見方を示し、そうしたことまで実現するには旗振り役として国交省に期待する姿勢を示した。また、サービスの品質・安全性で日本は圧倒的だとしながらも、「データ活用などで後れを取りたくない。全員が安心してデータを使える場が必要だ。MaaS、自動運転等の技術を利用者目線でサービスにどう替えていくか」と指摘しつつ、「結果的には、やりながら学ぶということが一番重要」と述べ、過剰な規制により慎重になり過ぎないことも必要との姿勢を示した。
山中氏は「将来の移動、モビリティ、MaaSがどうなってほしいか。国または大規模自治体レベルでビジョンを作るべきだ。それは行政だけ、あるいは民間だけで作るべきものではない。いきなり完璧なものはできない。参加、実行し、学ぶことが重要だ」と強調した。このほか、データ共有の必要性も説いた。
最後に加藤氏は「MaaSという言葉自体がわれわれの体に馴染んでいないと感じた。外国から来た特定のモデルに当てはめようとするとうまくいかない。日本モデルが必要だ。国、自治体、住民らが参加し、日本ならでは仕組みが必要だろう。われわれの言葉として使っていけるようになるべきで、それによりむしろ外国にも売り込んでいくきっかけにもなる」とした。

タク事業者の関心は…
各社のプレゼンで多くのタクシー事業者の関心を集めたと言えるのはやはり、ウーバーの山中氏とウィラーの村瀬氏の発言ということになるだろうか。ウーバーはいまでこそタクシー事業者と連携した配車アプリプラットフォーマーということになっているが、自家用車ライドシェアの元祖である。ウィラーはこのところ各地で「mobi」を展開し、実際の運行事業者には地元タクシー事業者を起用するなどしているが、その展開に当たっては道路運送法21条による例外的な許可を存分に活用しており、東タク協など一部地域ではタクシー業界主流と摩擦を起こしつつある。
今回のカンファレンスでウーバーの山中氏はダイナミックプライシングへの期待についても触れているが、6月に行われた記者勉強会では国交省が行う予定の実証実験については「変動幅が狭すぎて実効性が期待できない。フェイクだ」と非難していたが、そのような主張はまるでなかったかのようになりを潜めた。当然、ウーバー社が独自に行った調査の結果や独自の変動運賃制の制度設計の内容なども一切紹介しなかった。
一方で今回はMaaSがテーマだけにそれへの期待感は表明されているが、国交省製変動運賃をフェイクだと言い切るウーバーからすれば、MaaSなどのチマチマした仕組みにかかわっていても彼らが好む大きな収益は期待できないはずだ。
言ったこと、言わなかったことを総合すると、まずは国や日本航空などの大手かつ優良な事業者をパートナーとし、少なくとも他の交通モードや交通以外の分野を取り込んだ利便性の高いMaaSに組み込まれ、そのMaaSの知名度が上がる中で、ウーバーにとっては懸案となっている配車アプリにおける法人タクシーの提携先拡大の道具として期待している側面があるのではないかと感じられた。もっとも、10年スパンで考えた場合、パネルディスカッションでもあった通り、自動運転実用化の目途がついてくれば既存タクシー事業者をパートナーとする必要はなくなるのかもしれないが。
ウィラーの場合はこれまで貸切バス事業者として都市間高速バスで急成長を続けてきたものの、コロナ禍において密室で長時間乗車を強いられるバスが敬遠され、新たな収益の柱を必要していたというお家事情も透けて見える。

21条許可の現状は?
もっとも、渋谷区で展開しているmobiのように会員以外の単発運賃は非常に安く、サブスク、家族会員制などを目玉に、実際にはめったに乗車しない幽霊会員からの会費が収益を生む、ようするにフィットネスクラブやスポーツジムのようなビジネスモデルなのではないかという印象を持っている。渋谷区でのmobiは運行事業者は東京エムケイであり、道運法21条に基づく許可も東京エムケイがとったものだ。その意味でウィラーには投資リスクは少なく、コンビニエンスストアのフランチャイズシステムのようにも見える。
村瀬氏自身が語ったように京都・京丹後鉄道はウィラーが経営しており、その各駅にそれぞれのmobiを展開すれば、沿線全体をカバーするMaaSが出来上がる。ただ、同社が全国各地で鉄道を経営しているわけではなく、MaaSのネットワークを国中で構築していくには国の力と権威を借りる必要があったということだろう。
渋谷区のmobiでは、東タク協が断固として反対の姿勢を示しているものの、21日の関東運輸局定例会見で同局は21条許可を抑制的に運用はしていないと言い切っており、タクシー業界の剣幕に折れる気配はいまのところないようだ。
MaaSそのものは、山中氏や村瀬氏自身が語っているように、社会課題を解決できた上で、参加する事業者に収益が配当されるべきものであり、交通空白地を中心に国や自治体からの大きな補助金なしに継続できないものであれば、既存乗合バスに替えて一時的に住民の足を延命することはできても、それ以上のものに成長しそうな予感がいまのところしてこない。

タクシーの参加と収益確保の可能性
タクシー事業者の皆さんには「縄張りを荒らされる」という観点のみならず、どのようなMaaSであれば、個々のタクシー事業者が参加して収益に繋がり得るものなのかという観点でも、個別具体の事例を点検してみてほしい。
21条許可の限定期間が過ぎれば、地域公共交通会議の場で議論した上で4条許可がおりることになる可能性もある。収益を確保しつつ、突き付けられた社会課題を解決するタクシー業界案も検討しておく必要があると思う。もっとも、そもそも「そんな社会課題なんてなかった」という場合も、ことによるとありそうだが。(了)
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No.880 9月27日号  主な内容
■巻頭人物 
:プラディープ・パラメスワラン氏
(ウーバー・アジア太平洋地区モビリティゼネラルマネージャー)
■気になる数字
1万3664両 東京都におけるJPNタクシーの累計登録台数
■トピックス
:MaaSが変える未来―モビリティの将来像にタクシー業界は? 
〜Uber Japan オンラインカンファレンス
:車いすユーザーからの乗車依頼に備え
〜東タク協ケア輸送委が対応マニュアル配布へ
:譲れない一線はあるが、稼げる時に稼ぐための「フレキシブルな働き方」も
〜交通労連ハイタク部会 手水辰也・事務局長
:SNS発信を拡大・強化 〜兵タ協が「広報特別委員会」
:「フェーズ3」は不可避の図式… 
〜AIオンデマンド交通、第3回大阪市地域公共交通会議に向けて
:相互扶助による事業運営で生き残りへ一致団結 〜関協臨時総会
■東西往来
:コロナ禍を逆手に取る切り返し / 縮小体制でも呼びかけは変わらず
■この人この言葉
:山本 f氏 / 城 政利氏 / 吉川 紀興氏 / 兼元 秀和氏
シャッターチャンス
:本省対応の無謬性堅持で一貫 / コロナ・雇調金・最賃の三重苦
:タク業界に最良のリーダーは? / 経済活動再開時に困らぬように
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速さ+確かさ
交通界ファックスプレス(『交通界21』特別サービス号/ 週3回配信)

 

Faxpress 関東版
■ 乗降介助は無保険状態?
保険適用とタク料金設定で「2つの基準」
UDタクシー向け保険の背景に注目

【 東京 】UDタクシーの乗降介助に追加的料金を設定することは違法だとする国交省旅客課長による8月16日付事務連絡では、どこまでが違法で、適法となる料金設定とはいかなるものかを巡ってタクシー業界内でさまざまな声があがっているが、そうした中で全タク連や全福協の監修・協力を得て一部損保会社が開発、発売している「UDタクシー向け賠償責任保険」が成立することになった経緯が改めて注目を集めている。
タクシー事業の運賃料金制度通達では「旅客の運送に直接伴うものではない料金は認可も届出も不要」とされており、これを根拠に青森、広島の事業者らは乗降介助に料金設定したとみられているが、損保各社は車いす乗降介助の際の事故に対する補償は自賠責、任意ともに保険適用はされないという解釈で一致しており、いずれも法令の定めに基づくとしていることから、国の基準として自動車保険適用の際に乗降介助は「自動車の運行等」の範囲から除外され、タクシーの料金設定に当たっては同範囲に含めることで違法とされているのではないか、2つの基準がそれぞれに運用されているのではないかとの疑問が浮上しているという。
8.16事務連絡では青森、広島での事案を踏まえ「UDタクシーを利用する車いす利用者に対して、乗降の対価として追加的な料金を収受する行為が発覚した。当該行為は道路運送法30条3項の規定に反する。特定の旅客に対して不当な差別的な取り扱いをしてはならないという行為に該当し得る」「今後、当該行為の事実が確認された場合には、各地方運輸局等において厳正に対処する」などとしているが、乗降にかかわる料金設定のどこまでを違法とするかの記述はない。
21日の関運局定例会見では「乗降介助のみをもって追加的な料金を収受することは違法」との説明が行われており、少なくともトヨタ・JPNタクシーの場合ではスロープ板を使って乗務員が車いすに着座した利用者を車内まで押し上げ、方向転換の上、車両に車いすを固定する行為のみに料金設定することは違法行為に当たると受け止められている。

〜損保各社「自動車運行等」から除外で一致
一方、全タク連のケア輸送委員会でも紹介された「UDタクシー向け賠償責任保険」(東京海上日動火災保険)では、UDタクシーにおける乗降介助時のリスクを補償することがセールスポイントとされており、「自動車保険の対象とならない『UDタクシーにまつわる業務の事故』の損害保険として開発された」としている。ここでいう、UDタクシーにまつわる業務の事故については、「車いすを転倒させ乗客にケガをさせてしまった場合」「乗客の荷物を運び入れる際に落として破損させてしまった場合」に補償を行うとしている。つまり乗降介助部分については既存の自賠責保険、任意保険ともに乗降介助の際の事故については自動車保険がカバーする「自動車の運行等」の状況から除外されているため、これをカバーする保険商品開発の必要があったという。こうした扱いは他の損保会社の場合も同様で取り扱いは横並びだとしている。
また、運賃料金制度通達では、「不当な差別的取り扱いをするものではなく、かつ、旅客が利用することを困難にするおそれがないもの」を前提とした上で「介護料金等旅客の運送に直接伴うものではない料金は、当然のことながらこれに含まれないものであり、認可も届出も不要である」とされている。

〜自賠責から除外なら…
自賠責保険は国交省と金融庁の共管になっているが、自動車保険において乗降介助が「自動車の運行等」の対象から除外され、新たな保険商品開発の必要が生じたことなどからも、UDタクシーの運行に積極的な事業者がかえってこれら保険適用と運賃料金制度通達の文言を総合的に考慮して、乗降介助料金は「認可も届出も不要」と判断したのではないかとの見方も浮上している。

〜選択迫られるタク事業者
8.16事務連絡では具体的事例などは示さないまま、乗降介助のみを対象とした料金設定は違法と断じたが、自動車保険の適用の基準に準じれば、そもそも乗降介助のみに追加的料金を設定しても適法なのではないかと疑問を感じる向きもあるようだ。
また、自賠責、任意ともに乗降介助の際の事故を補償しないとなると、これら損保会社が発売しているUDタクシー向け賠償責任保険に加入していないUDタクシー保有事業者は、乗降介助について無保険状態になっているとも言える。
JPNタクシーの普及に伴い、これらの保険に加入するか、無保険・自家補償かを事業者も選択する必要に迫られることになりそうだ。
ただ、国交省自動車局保障制度参事官室では本紙の取材に対し、自賠責保険が乗降介助の事故の際に100%保険適用されないとは言えないとし、極めてレアなケースながら、車いす用スロープに欠陥があった場合で、それが原因で事故に至った場合などは補償が行われると説明している。

〔9月25日号関東版掲載〕  <Topへもどる>

2021年9月25日号 関東版 ニュースヘッドライン
【 東京 】乗降介助は無保険状態?/保険適用とタク料金設定で「2つの基準」/UDタクシー向け保険の背景に注目
【 東京 】宙に浮く「8.16事務連絡」/「内容不透明」東タク協も周知せず
【 東京 】東京は前年実績から11ポイント改善/19年対比の営収推移 サンプル調査
【 東京 】広告付きシェルター/東タクセン 新たに3乗り場
【 東京 】準特指定解除、2年連続で見送り/コロナ禍の需要急減で国交省
【 東京 】日車営収は多摩が上位に/東タク協 8月原計輸送実績
【 東京 】変動運賃制の実証実験など/規制改革推進会議WGで国交省説明
※新型コロナの影響による営業収入の対2019年同月比の変化(20年1月〜21年8月)
 
2021年9月25日号-2 関東版 ニュースヘッドライン
【 横浜 】生活に不可欠な交通の維持・確保/予算・制度上のタク支援働きかけ/小瀬・関運局長が就任会見
【 東京 】「個タクは不要」と言われないよう/日個連都営協・冨本理事長
【 東京 】運改準備へ1万人アンケート/東タク協広報委員会
【 横浜 】「ミスターコンテスト」動画制作/神タ協 採用増に取り組み
【 東京 】「勇気をもって運転の中断を」/健康起因事故で東タク協・秋山副会長
【 金沢 】「ニューノーマル」助成など/都要請へ東京交運ハイタク部会
【 東京 】「安心・安全なタクシー」アピール/東タクセンが利用拡大キャンペーン
【 横浜 】横浜市、京急電鉄が中心街で実証実験/「グリスロ」神タ協横浜支部に説明
【 横浜 】19年比の6割台程度で推移/神エル協 5〜8月の出荷量
 
2021年9月24日号 関東版 ニュースヘッドライン
【 横浜 】乗り放題「mobi」問題なし/バス・タクに配慮等の抑制的運用も否定/「21条許可」めぐって関運局見解
【 東京 】特区・武三は五輪が後押し?/東タク協 7月の全社輸送実績
【 横浜 】コロナ休車4354両/関運局 復活は5879両に
【 横浜 】関東管内のフードデリ 許可70件
【 東京 】事前確定運賃の更新申請/都個協 10月8日までに提出を
【 横浜 】日車営収増収は4地区のみ/関東管内 8月の原計輸送実績
【 東京 】ニューノーマルタク全車配備へ/国際自動車 11月中旬めど
 
2021年9月24日号-2 関東版 ニュースヘッドライン
【 東京 】秋の全国交通安全運動始まる/高齢者等の安全確保、二輪車事故防止など/各地で出動式 池袋では豊島区長が初参加
【 東京 】ニューノーマルへデンソー推し?/大臣会見で国交省の対応やり取り
【 東京 】隔勤で柔軟な働き方模索も/交通労連ハイタク部会・手水氏
【 東京 】ライドシェアとの連動を警戒/デジタル化で自交東京・城委員長
【 東京 】総会は書面開催に/全国ハイタク交通共済協組
【 東京 】11社・17人が受講/東タク協三多摩支部UD研修
【 東京 】小川部会長、手水・事務局長再任/交通労連ハイタク部会
 
2021年9月17日号 関東版 ニュースヘッドライン
【 東京 】「mobi」の即刻中止を要請/関運局の21条許可に疑義申立て/東タク協 理事会で報告
【 東京 】実効性のある健康起因事故対策を/個タク事故受け赤羽国交相
【 東京 】「白タクもどき」で問題提起/全タク連経営委 総選挙対応も
【 東京 】今後は改定表示管理規則等で対処/都個協 マスター不正表示は皆無
【 東京 】東タク協 「mobi」中止を書面要請
【 東京 】「ニューノーマルタク」2800両/日交 都内直営・直系子会社で
【 東京 】車いす対応マニュアルへ協議/東タク協・ケア輸送委とJWMTO
【 東京 】ニューノーマルタクシーを利用/9番目のkm個人タクシー出発式
【 東京 】埼玉県内でも配車サービス/S.RIDE 164両で
【 横浜 】東京都内巡るミステリーツアー/三和交通、19日から日曜限定
 
2021年9月17日号-2 関東版 ニュースヘッドライン
【 横浜 】1.314キロ600円/加算距離2回分を前倒し/神タ協 小田原交通圏の初乗り短縮運賃「妥当」
【 横浜 】規模大幅縮小で開催/神奈川都市交通労組 定期大会
【 東京 】優良運転者など合同表彰式/東タク協三多摩支部 11月29日
 
2021年9月15日号 関東版 ニュースヘッドライン
【 東京 】健康起因事故の再発防止を/マニュアルによる健康管理の再確認など/都個協 死傷事故受け連絡文書
【 東京 】運転中にくも膜下出血/64歳ドライバーも死亡
【 津 】三重県知事に一見・元自動車局長
【 東京 】毎日が夕刊1面トップで報道/UDタクの車いす乗車拒否
【 東京 】会費改定含め収支見直し/都個協 正副会長会議で検討へ
【 東京 】重点目標に交差点事故減少/秋の事故防止運動で東個交通共済
【 アムステルダム 】「ウーバードライバーは従業員」/オランダでも原告勝訴の判決
【 那覇 】1両当たり10万円以上の支援を/沖縄県協会が県・県議会に要
【 東京 】タク2社・3営業所を永年表彰/8月のグリーン経営認証
【 東京 】タクシー部解散、本部直轄へ/新運転 11月14日に定期大会
【 東京 】都要請は都民ファーストの会経由で/東京ハイタク労働団体
【 東京 】国交省人事(13日付)
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Faxpress 関西版

 エリア拡大「何とか阻止」
大タ協理事会 AIオンデマンド実証実験で坂本会長

【 大阪 】大タ協(坂本栄二会長)は24日、大阪市天王寺区のホテルアウィーナ大阪で第101回理事会を開催した。冒頭あいさつで坂本会長は、9月末での緊急事態宣言解除、政府による行動制限緩和の実証実験に期待を寄せた。また、地方創生臨時交付金の活用について自身が大阪府に要請。21日には府担当者の来訪を受け、「感染症対策として前向きに検討している」との回答を得たとし、「何らかの支援が出てくる可能性が高い」と述べた。一方、大阪メトロのAIオンデマンドバス実証実験について、大阪市・大阪メトロが計画するエリア拡大を「何とか阻止しなければならない」との決意を示した。

〜会長が経営担当、筆頭副会長は古知氏
理事会では、先立って開いた五役会で、会社売却により退任する照屋勝晴副会長の後任は補充せず、残りの副会長が2つずつ専門委員会を担当していることから、照屋氏が担当していた経営委員会は坂本会長が担当することと、古知愛一郎副会長を筆頭とすることを決めた旨、報告した。
坂本氏は、「コロナ禍になって何社かの事業廃止、何社かの事業譲渡があり、つい先日は副会長会社の経営交代というようなことで、皆さんも『大変だ』という気持ちが改めて湧いてきたかも分からない。ウィズコロナ、アフターコロナの対応を、各委員会で話し合いながら、どうすれば事業を継続していけるのかというようなところについて、改めて話をしていかなければならない。そういったためにもより一層、団結を深めながらやっていきたいと思うのでよろしくお願いしたい」と求めた。
「今まで全く支援がなかった」大阪府との交渉については、近畿運輸局の金井昭彦局長、柳瀬孝幸・自動車交通部長も「いろいろと支援をしていただいている」とし、互いに連携しながら話を進めているので、もう少しお待ちいただきたい―と報告した。
「今一番の問題」としたAIオンデマンドバスに関しては、10月1日の地域公共交通会議で協議する実証実験の「フェーズ3」で大阪市側が計画するエリア拡大を「何とか阻止していかなければならない」とした。
坂本会長はさらに、東京都内で発生した運転者の健康起因による死傷事故に触れ、「日ごろからより一層健康管理をしっかりとやっていかなければ。対ライドシェアでも『われわれタクシーは安全です、安心です』とやっているので、こういう事故を起こしてしまうと、利用者からの信頼を失ってしまう。改めてもう一度しっかりとした健康管理を、少しでも事前に防げるような形での運行管理をよろしくお願いしたい」と注意喚起した。
〔9月25日号関西版掲載〕 <Topへもどる>

2021年9月25日号 関西版 ニュースヘッドライン
【 大阪 】エリア拡大「何とか阻止」/大タ協理事会 AIオンデマンド実証実験で坂本会長
【 大阪 】エリア拡大でバス6両→15両に/「フェーズ3」で大阪市が事前説明
【 大阪 】「次の会長を選ぶまで」/親交会・澤会長に聞く
【 京都 】雇調金算定、最賃引上げ/京タ協・兼元会長「悪いニュース」
【 京都 】変動運賃制めぐって見解
【 神戸 】神戸・阪神間の落ち込み続く/兵タ協 8月の原計輸送実績
【 大阪 】府警の運転免許返納運動に協力/大タ協 タク乗車券100人分
【 大阪 】優良運転者の会長表彰で報告
【 京都 】京都センチュリーホテルと連携/弥栄自が「ノスタルジックタク」
【 大阪 】オンデマンドバスで打ち合わせへ/大阪交運労協 宮武・事務局長
【 神戸 】兵タ協 家賃の減免要望
【 和歌山 】今年も式典なしで/和タ協の優良乗務員表彰
【 京都 】京都アサヒタク 営業所に看板設置
【 京都 】互助協組は会議形式、市個人は書面/コロナ禍2年目の個タク総会
【 大阪 】近鉄タク労組 定期大会延期
【 京都 】京都で安マネセミナー 11月9日
 
2021年9月25日号-2 関西版 ニュースヘッドライン
【 大阪 】タクシー1両当たり上限4万円/大阪府が感染症対策で補正予算案
【 東京 】8月の京都は再び5割下回る/19年対比の営収推移 サンプル調査
【 神戸 】兵庫県は1両当たり7000円/感染防止対策 別途市町随伴も
【 京都 】神戸、伊丹両市も支援事業
【 大阪 】フリー事業者への対処厳格化/大個連・久保会長、行政に望む
【 神戸 】「むすブン」早くも利用者1万人突破/西脇市のデマンド型乗合タク
【 神戸 】洲本自動車が1両増車
  
2021年9月24日号 関西版 ニュースヘッドライン
【 大阪 】大阪タク親交会 会長に澤氏/照屋氏の後任、副会長に森氏
【 神戸 】SNSで業界情報発信/兵タ協が「広報特別委」
【 神戸 】「県内旅行割引」の県施策に対応も/兵タ協理事会で吉川会長
【 京都 】比叡山観光タク 全休さらに1カ月
【 神戸 】大成交通は稼働再開
【 大阪 】「夜の経済活動」再開に期待/緊急事態解除見通しで事業者
【 大阪 】ナショナルタクの売却話題に/大協が持ち出し社長会
【 大阪 】運転免許返納割引/個タクの導入は東高西低
【 神戸 】兵タ協が事故防止パレード/秋の全国交通安全運動
【 奈良 】奈良近鉄・梅谷前社長が田原本町議に
【 神戸 】法人乗務員 60歳超が67.5%/兵タクセン 8月末の運転者証交付
【 京都 】10月1日に暫定発足へ/7団体で「京都個タク団体協議会」
【 京都 】正副会長+専門委員長/京タ協がリモート会議
【 大阪 】20年度の監査・処分「大きな変化ない」/近運局 福田・監査指導部長
【 大阪 】「アフターコロナ見通せないが」/需要回復巡り柳瀬・自交部長
【 大阪 】「タクシーとも連携協力が大事」/地域の交通体系で柳瀬部長
【 奈良 】町内全域でデマンド型乗合タク/奈良県平群町 介護保険料も充当
【 京都 】第5期認定乗務員の更新研修/FFドライバー 認定合計139人
【 大阪 】プライムリブ専門店と提携/東京・日交 フードデリ拡大
【 大阪 】私鉄関西ハイタク労連が秋闘統一要求
【 京都 】個人3団体「DiDi」アプリ説明会
【 奈良 】奈良大和四寺巡礼会・活性化会議
【 神戸 】銀星交通→東京バス 全車両譲渡
 
2021年9月17日号 関西版 ニュースヘッドライン
【 大阪 】臨時交付金の追加交付で活用要請/近運局 柳瀬・自交部長、大阪府に働きかけ
【 大阪 】近畿管内のフードデリ 許可は39社
【 大阪 】「魅力ある職場」アピールを/人手不足解消で柳瀬・自交部長
【 神戸 】対タクシー3900万円を計上/臨時交付金追加交付で兵庫県
【 奈良 】臨時交付金によるタクシー支援/奈タ協 県下市町村に要請書
【 和歌山 】自治体への要望など報告/和タ協 17日に理事会開催
【 大阪 】奈良の運改 追加書類提出順調
【 大阪 】北新地の合同街頭指導等中止
【 神戸 】無線の減少超えるアプリ配車の伸び/青木タクシー・近藤社長
【 大阪 】「大阪交運労協で意見書を」/オンデマンドバス巡り宮武・事務局長
【 奈良 】出雲観光タクが成功事例/奈良県の「タク利用型観光地作り」
【 訃報 】池田 加代子さん(池田誠也・近自無協会長、生駒交通会長の妻)。90歳
【 大阪 】古知理事長「次世代につなぐ」/関協 生き残りかけ「一致団結」
【 大津 】ゆりかごタク研修会など見送り/滋タ協 各専門委を合同開催
【 神戸 】申請16件、10件支給済み/兵庫県下の運輸業労災認定
 
2021年9月15日号 関東版 ニュースヘッドライン
【 大阪 】ニュ―ノーマルタクの出発式/日交G関西 第一弾112両
【 大阪 】「コロナで焼けた戦場に打って出る」/ワンコインG 16日から全社営業再開
【 東京 】毎日が夕刊1面トップで報道/UDタクの車いす乗降問題
【 大阪 】ナショナル買収劇に業界労使は…
【 大阪 】新・旧経営陣があいさつ/ナショナルタク乗務員説明会
【 大阪 】ナショナルタク HPに日交マーク
【 大阪 】定期大会はエル大阪で/交通労連関西地総 10月23日
【 神戸 】チケット手数料見直しへ/兵協 提携事業者など対象
【 神戸 】若年化「車両運用の観点からも」/兵タ協 橋・労務副委員長
【 神戸 】業界支援は継続的に/永和・永野社長「強い姿勢で交渉を」
【 京都 】「ララピーの四つ葉のタクシー」/弥栄自がスーパーライフと連携
【 東京 】運転中にくも膜下出血で死傷事故/個タクドライバーも死亡
【 東京・大阪 】コロナ出口戦略を歓迎も伴う危険
【 神戸 】労働局交渉で苦境訴え/兵庫交運労協ハイタク部会
【 大津 】福祉タク車両を貸し出し/守山タク レンタカーに転用
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