【千葉】全タク連の武居利春・副会長兼労務委員長は9日、千葉市美浜区のホテルグリーンタワー幕張での千葉県タクシー協会定時社員総会開催前に行われた「労務説明会・人材確保セミナー」で労務問題に関する講演を行い、働き方改革の進行や社会保険の適用範囲の拡大により事業者のおかれた経営環境はますます厳しくなるとするともに、「ラストワンマイル・モビリティ／自動車ＤＸ・ＧＸに関する検討会」の改善策によって、力のある事業者が地方の交通不便地域に出張所を設けて進出できるようになるとし、「自分たちは関係がない」では済まなくなる―と語った。
　武居氏は、近く閣議決定される「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版案」では、労働者がキャリアアップのため退職するなら失業者同様1週間で雇用保険を受給できるよう制度変更していく方向にあるため、今後、労働者の企業移動が激しくなる公算が大きいとするとともに、最低賃金の全国加重平均1000円を本年中に達成する方針であることから、東京や神奈川、埼玉と同じＡランクに属する千葉は、一度に40数円上げざるを得なくなると指摘。それは、東京や神奈川と同じ土俵で人材確保競争をしなければらないことも意味しているとした上で、東京の日車営収は6万3000円、昨年11月の運賃改定後には売上180万円、手取り100万円の乗務員も出現、寮を完備した東京の事業者は全国から人を集めており、自社でも松戸や柏などからたくさんの応募があるとし、「法律は全国一律、労働者は稼げる場所を求めて全国を移動する。そこを認識して労働条件と労働環境を改善していってほしい」と述べた。
　社会保険の問題については、来年10月１日から「50人超」の事業所に対し、週所定労働時間20時間以上の短時間労働者に対する社会保険適用が拡大されるだけでなく、遠からず事業所の人数要件そのものが廃止され、全ての事業所に適用される見込みが大きいとし、定時制乗務員が多い事業者に対し注意を喚起した。
　また「ラストワンマイル・モビリティ／自動車ＤＸ・ＧＸに関する検討会」の改善策が実施に移されたら、たとえば実力のある千葉の事業者も、営業区域外の交通不便地に最低車両2両程度、コンビニ等の駐車場を借りて出張所を出せるようになり、今後さらに企業間格差がつく公算があるとし、「ウチは関係ないでは済まなくなる」と警告。
　24年4月からの「時間外労働上限960時間」の適用に関しては、すでに次の「720時間」へ向けたスケジュールは組まれていて猶予はさほどないとし、「『赤字になったから運賃改定させてくれ』では生き残っていけない。今後は国交省がやる気になってくれている『運賃改定3年ローテーション』を実現させて労働条件改善の原資を作り、時短をやった上で今の賃金水準を維持できるよう持っていきたい。そうでなければ、この産業に人は集まらない」と強調。
　質疑応答では、今年9月での打ち切りが発表された燃料高騰補助の継続と、来年3月に期限を迎える期間限定休車制度の2年延長を、全タク連として要望していることも明らかにした。

〜パンフを全国のハロワに配置
　続いて、浅野茂充参与・労務部長が人材確保について講演。全タク連として取り組みを始めている特定技能1号および2号の在留資格を持つ外国人の受け入れについては、技能実習制度とは異なり、日本人と同じ待遇で雇用する必要があるうえ、住居を確保したり入管への届出を手伝うなど支援をしなければならないが、これを外注すると月額3万円程度かかってしまい、日本人を雇用するより高くつくことや、為替が円安になり、国際的にみて賃金が目減りしてしまっており、そもそも来日してくれるのかという疑問もあると述べた。
　また、「タクシーは人材確保のためのＰＲが下手」と言われているので、今回、「タクシードライバーになりませんか！」というカラー刷り、14ページのパンフレットを作成したとし、全国のハローワークに置いてもらって採用増を促したいと語った。
〔6月10日号関東版掲載〕　 <Topへもどる>