【東京】全タク連の川鍋一朗会長は5日、関東地区ハイヤータクシー協議会総会で来賓として祝辞を述べる中で、菅義偉前首相ら有力政治家などからのライドシェア解禁検討発言が相次いだことを受け、自らは望まないがライドシェアに類するタクシーではない新たな輸送形態が認められることを政治的に阻止することは困難な段階になっており、順序としてタクシーの規制緩和の徹底を先行させるのが法治国家としての筋道だとの考えを改めて示すとともに、現在のタクシーの形を維持しライドシェア反対で徹底抗戦することは意味がないと指摘した。準特定地域の指定解除を含めてタクシーの徹底的な規制緩和促進で、タクシー事業は再び競争モードに回帰するとの認識を示した。

〜24年10月ですべての準特が解除？
　川鍋氏は祝辞の中で、コロナ禍の中で生き残ろうという緊急時モードから通常時の一般モードに戻っているとしたほか準特定地域についても、私見として24年10月1日以降はすべての指定地域が解除になるとの見方を示し、「少なくとも東京都特別区・武三交通圏や神奈川県京浜交通圏など大半は指定を外れると見ている。解除されれば新規参入が可能になるので、わたしはいまそう思っているということを皆さんにお伝えしておきたい。タクシーは規制産業として続いてきたが、また競争モードが強まっていくという流れにある」などと述べた。また、競争モードの中では、現在のタクシーという形態の中での新規参入などとの競争に加えて、神奈川から始まる新しいスタイル（＊神奈川版ライドシェア）との競争も始まるとの認識を示し、「もう止められそうもないと感じる。それははっきり申し上げておきたい。あとで言われても困るので先に言っておく」と強調。菅前首相発言以来、永田町、霞が関のほか、マスコミの論説委員などに1人ひとりアポイントし、メディア対策も始めているとした上で、「わたしの肌感覚では、ある程度の新しい形の模索と言うものを止めようがないものと思っている。各地で色んな方が呼応しており勢いが付いている」「それでもまずはタクシー事業者が真っ先にしっかりとした役割を与えられることが大事」と述べ、「ライドシェアを始めるのなら、その前にタクシーの規制緩和を。徹底したタクシーの規制緩和を求める。それが法治国家としての筋じゃないのか」という論陣を全マスコミにぶつけていると説明。しかし、その主張に対しても「ダメなタクシー会社は変わらない」「乗務員の募集広告さえも出していない会社も多い」「出していたとしても、いまどきあんな募集広告で応募者があるのか」という、「カネも使わず研究もしていない」という指摘をしばしば受けるとの外部の意見を紹介し、「タクシー業界内のレベルで満足するのではなく、外の世界と同じレベルで努力すべきと何人にも言われてきた。弁明はしているが痛いところを突かれているのも事実。ここからは、『会長が』とか『政治家が』とか『法律が』とかいう問題ではない。『会長、頑張ってください』と札幌でもよく言われたが、『頑張るのはわたしだけ？』というのが本当のところ。わたしはわたしに与えられた任務に全力で当たるが、これからの未来はわれわれ１人ひとりがどれだけ進化できるかに掛かっている」と繰り返し強調した。
　川鍋氏は、ライドシェアのような何らかの新しいものが入ってくることが阻止できないのだとすれば、その前にタクシーの規制緩和を求めていくか、徹底抗戦の2つの道があるとした上で、「わたしは徹底抗戦には意味がないと思っている。タクシーの進化など当社ではできないからやめてくれと言われても、それには対応できない。現在のタクシーを1ミリも変えずに徹底抗戦だ―とわたしは言わない。会長職に全力で当たるがわれわれの新しい進化形を作る」と述べたほか、「それがどういう形に落ち着くかわたしにもわからない。しかし、そういう時代になったということだけは早めに皆さんに申し上げておきたい。あとで『聞いていない』とならないよう、それだけは皆さんへのメッセージとしてお伝えしておきたい。コロナ禍からの全員の生き残りから自由競争へ、さらに現在のタクシーとは違う形のものが入ってくる可能性があること。わたしが望んでいるわけではないが政治家や世の中が望んでいるのだとすれば、それに向かってタクシーの徹底的な規制緩和が必要であり、何らかの新しいものが入ってくるのなら、われわれが手なずけていく必要がある。そういう方向でやりたいと思うので、明るい未来に向けて全員で頑張りたい」と締めくくった。
〔10月7日号関東版掲載〕　 <Topへもどる>