調査目的にも触れられているがＵＤタクシー（＊この場合、主にトヨタＪＰＮタクシーを指す）が発売開始（2017年）から7年が経過したことなどを踏まえ、昨年に続き再度一斉調査を行ったとされており、10月24日を中心に全国で延べ69人の車いすユーザーがＵＤタクシーに乗車したという。乗車方法は、�@道路で流しのタクシーを拾って乗車�Aタクシー乗り場から乗車�Bアプリを使って配車依頼�C電話でＵＤタクシーを指定して配車依頼―の4系統がある。
　全国一斉行動としては、16都道府県で延べ69人が参加し、エリア別に見ると別掲1の通りであり、東京都26人、37.7％、東京都以外43人、62.3％となっている。
　言うまでもないことながら、ＪＰＮタクシーの普及状況はというと、東京都が全国の過半数に達しており、県単位でみてもびっくりするほど少ない地域も散見される。車両の普及状況に反して実際の一斉行動は東京都以外が6割強を占めており、サンプル数そのものの少なさと併せて調査結果の有意性に多少の疑問なしとはしない。
　ただ、車いすユーザーという当事者そのものによる調査であること、他に類似の調査が存在しないことから、本調査のデータそのものが貴重であることは論を待たない。調査に参加した車いすユーザーの使用している車いすそのもののタイプについては別掲2の通りで、ほぼ半数を簡易電動タイプが占める。手動型は本格的な電動よりも多いが、タイプとしては簡易電動型が最多数派。

乗れなかったのは22％で改善傾向
　では、実際の乗車拒否の状況はどうだったか？別掲3で示している通り、全国69件（人）のうち、実際に「乗れなかった」人の数は15件、22％で、前回調査の31％からは改善されている。重量が重く、嵩のはる電動車いすが占める割合が高いかと想像していたが、実際には単純にシェアの高い簡易電動型の構成比が高く、乗車拒否の理由に車いすのタイプはあまり関係がないことも窺える。
　一方で地域別の乗車拒否発生の状況を見ると、東京都での発生率は一貫して低めということもできるが、それも東京都以外との比較による相対的な評価とも言え、一般のタクシーと健常者の乗客との間で8％もの乗車拒否が発生していれば立派な社会問題になっているところである。社会全体で大きな話題になっていないのは、それだけ車いすユーザーの声がまだまだ小さいということ、社会的な関心も必ずしも高くないということ、加えて東京都以外の地域ではＪＰＮタクシーの普及率が低すぎて、そもそも普通のタクシーに車いすユーザーが乗ろうと思う機会が少ないことなどが関心の低さに繋がっているのではないか。
　また、利用形態別での乗車拒否発生の状況は、流し営業で18％、タクシー乗り場14％、アプリ配車20％、電話予約33％となっており―「事前にわかっていれば用意できるだろう」という予測は当てはまらなかった。
　あらかじめ車いすのままで乗車したい旨をアプリや電話で伝えても拒否されるケースがあるということもわかった。調査参加者からは、アプリ配車について、「配車依頼に自信をもって答えられるように、インセンティブを作ってほしい。タクシー乗り場などでは、対面で拒否ができにくい抑止力があると思うが、アプリでは、配車に応えるかどうかを自由にしていると、車いすは置き去りになる」との声があったほか、電話予約についても、「配車を断られた際に『車種指定はできない』や『当日の時間予約は無理』などの理由で断られた。車いすで乗車できる車両は増えていてもそれを気軽に使うことができるソフト面が整っていないと感じた」「今回乗れるエリアのタクシー会社に多数電話したが予約をことごとく断られ、中には予約の場合6000円の追加料金が発生すると言われる会社もあり憤慨した」とする意見もあった。米国型ライドシェアが国内で全面解禁になれば、ＵＤタクシーの普及は遅れるどころか、ひょっとしたら全滅するおそれもある。そう考えれば車いすユーザーとタクシー事業者・乗務員は共通の利害を持ち、もっとフレンドリーな関係になっても良いはずなのにそうなっていない。そういう角度で考えると、両者の関係はまだまだ「残念な状態」というほかない。
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